LOST

僕には記憶の欠けた時間がある。 気が付けば僕は病院のベッドの上にいて、 珍しく両親が揃って僕の手を片方ずつ握っていた。 その瞳はとても悲しげで、 僕のほうが二人を心配になってしまった。 「僕は大丈夫…」 そう言うのがやっとだったけれど、 今は、これで許して? 【lost act,9】 最近、夢見心地が悪い。 目を開ければ魘されていたのか体は汗ばんでいて、 僕の瞳からは涙が零れていた。 軽い不眠症だ。 それでも僕は皆に悟られないように学校へ行く。 それはとても精神力を使うことだったけれど、 まぁ、なんとかなるだろ。 「春日、大丈夫?」 「うん?大丈夫ですよ?」 さすがは比呂。 僕の異変にすぐ気付いたらしい。 でも、僕も折れる訳にはいかない。 にこりといつもの様に笑みを浮かべれば、 比呂もそれ以上の追求はしてこなかった。 …ゴメンね。 「風…」 「ん?」 「何か生暖かいですね。」 「あ〜…週末は雨らしいから、その所為じゃないか?」 「…そうですか…」 週末…。 みんなに会える日。 そう考えるだけで心が温かくなったような気がした。 早く会いたい。 今回は雷神にばれてなきゃいい…。 そんなことを考えながら、僕は授業中にも拘らず、 眠りに落ちた…――――。 這う… 暗闇の中で、何かが。 僕の体を確かめるかのように、 じっとりと。 やめて欲しいのに、 僕の体は金縛りにあったみたいに動けない。 否… 動かせないんだ…”恐怖”で。 ひくつく喉は、声すら出せなくて、 空気の抜ける音だけが、空しく鳴る。 怖い、 怖い怖い……怖い。 闇の中から伸びてきた人の腕。 それが僕の首に掛けられた。 「ゃ、めっ…「春日!?」」 「!?」 突如、名前を呼ばれて僕は一気に覚醒した。 目の前には担任の三次(ミヨシ)先生と、 青白い顔をした比呂と秋一がいた。 「な、に?どうかした?」 未だ喉に夢の中の感触が残っていたが、 僕は気にしないよう勤め、言った。 途端上がる非難の声。