君の世界

「あ〜ぁ、こりゃやばい。」 女の子にはもっと優しく… 水城の言った言葉をふと思い出して、俺は喉で笑った。 【君の世界2】 はっきり言って、俺はモテる。 自意識過剰とかでなく、本気で。 しかし、今回は振った女が悪かった。 「お前、俺の女にしつこくちょっかいかけてるんだってなぁ?」 「……………は?」 いかつい男が声をかけてきたと思ったら、いきなり殴られた。 ちょっとこれはないんでないの? ただでさえ、ちょっと落ち込んでんだ。 さすがの俺も切れちゃうよ? 「…ててて…なんな訳、いきなり。」 「じゃかぁしぃわ。人の女に手ぇ出しといて何やえらそうじゃのぅ??」 「すいません、俺女に興味ないんですけどー。」 「確かに俺の女は可愛いしな?手を出したくなる気持ちも分かるわ。」 て、聞いてねぇし。 つか、誰??こんな悪趣味な野郎と付き合ってんの。 「けど、人間破ったらいけねぇルールっつーもんがあるだろがよぉ?」 ちょっと、最もおかしちゃいけねぇルールを真っ先に破ってそうな人に言われちゃったよ。 てゆーか、何かやばくない? この後の展開って、ドラマとかでよくあるアレっすか?? 「この落とし前、きっちりつけて貰おうじゃぁねぇの」 「あ、やっぱし?」 ぞろぞろと、いかつい男の仲間が出てきてあっという間に俺を囲む。 所謂、リンチですよね、これ。 あ〜…最悪。 「謝るんなら、今のうちやぞ?」 「え〜っと??ごめんちゃい☆」 「…………………………殺れ。」 「わぁお、ここはもう少しのってくれてもいいんじゃねぇの??」 一気に殴りかかってきた強面の兄ちゃん達の攻撃をよけながら言う。 よけられた兄ちゃんたちは互いにぶつかっちゃったりなんかして言い合いをはじめる。 それを大将に怒られて再び俺に向かってくる。 何か埒があかないっス。 「てんめぇ…当たりやがれっ。」 「やだよ、痛いモン」 「ふざけやがって…っ」 別にふざけている訳ではないが。 まったく…今日は何という日だろう。 変な女から告白されて、 それを水城に見られてて、 まぁ、あいつと話せたのはいいけど。 いかつい男に殴られて、 あらぬ疑いを掛けられて、 その上リンチされて…(当たってもいないが) あぁ、何か本当に腹立ってきた。 「ちょっと待った。」 俺がウサ晴らしも兼ねて雑魚どもの1人を殴ろうとしたその時、 あまりにもその場にそぐわない声が響いてきた。 「な、誰だ!?」 大将が叫ぶ。 「や、ただの通りすがりです。」 「ちょっとぉ〜なんなのよこいつぅ。」 そこにいたのは昼間俺に告白してきた女と水城だった。 「み、ずしろ?」 「やぁ、奇遇だね。怪我も無いみたいで良かったよ。」 にこり、と水城が笑う。 それだけで、俺のイライラはなくなっていた。