「水城(ミズシロ)は面白いな。」 「うぇ?何で僕の名前…」 「さぁて、何でだろうな。」 驚きを隠せないでいる僕に、更に意地悪そうに笑った彼は、 自分で考えろと言わんばかりに僕の頭を撫ぜた。 「?」 「…………はぁ。」 「???」 「お前ね、ここは嫌がるとか、手を払うとかすることがあるだろうが。」 「何で?」 「何でって……嫌じゃないのか?」 「嫌に決まってるじゃないですか。」 「じゃあ何で。」 「え、だって、そんなことしたら余計にやってくるでしょう?」 「まぁな。」 「なら、下手に動かない方がマシです。」 「…ほう…」 彼は意外そうに僕の顔を見つめた。 そして、新しい玩具を見つけた子供のような笑みを浮かべると、 僕の両頬に手を添えた。 「??」 今度はなんだろうとそのまま大人しくしていると、 彼の顔がだんだん近付いてくる。 おや?っと思ったときには時既に遅く、僕は彼にキスをされていた。 「…んん!!??」 何でやねん、と大阪のノリで突っ込みを入れようにも口は塞がれているので無理だった。 こんな時でもこんなに冷静でいられるとは… 我ながら少し危機感が足りない気がしなくもない。 しかし、コレはさすがに抵抗しない訳にはいかないので、 取り敢えず彼の腹を蹴る事にした。 「…っってー!?おま、普通蹴るか?この状態でっ」 「や、さすがにコレはやばいかなって…」 「だからって蹴りかよ!?」 「はい、手っ取り早く。」 彼もコレは以外だったらしく、涙目状態で文句を垂れている。 でも、僕は悪くないと思うので無視しておいた。 「たく…お前は何処を見てるんだかさっぱりだな。」 「その言葉そっくりそのままお返しします。」 「あん?」 「女の子にはもう少し優しくしておいた方がいと思いますよ?」 そう告げて、僕は今度こそ立ち去るべく歩き出した。 彼の目が、ほんの少しだけ悲しそうに歪められたのを僕は気付く事が出来なかった。 「…っそ、どうすりゃいいんだよ。」 誰もいなくなった廊下で、彼はヒトリごちた。