例えば、君の目に僕が映っていたなら… ……何を思っているの? 【君の世界】 それはとてつもなく簡単で、難しい。 僕にはとてもじゃないけれど出来ない。 女の子は強いと思う。 「好きです、付き合ってください。」 窓の外から聞こえてくる声に、僕の心臓がドクリと鳴った。 思わず視線は窓の外へ行き、その告白タイムを静かに見守る。 告白しているのは可愛いと男子に人気の女の子。 告白されているのは格好いいと女子に人気の男の子。 二人並んで立つ姿はお似合いと以外言いようが無い。 女の子の頬はほんのり赤く染まっていて、真剣である事を物語っている。 男のほうは聴いているのかいないのか、 その視線は女の子どころか何処か遠くを見ているようにも見える。 「わたし、本気なんです。」 「……。」 「返事、今日じゃなくてもいいんで…」 「断る。」 「……な、んで、ですか?」 「俺、あんたのこと知らないし、興味も無いから。」 はい、言っちゃいましたよ。 モテる男の言える言葉ですな。 女の子も。まさか自分がフられるとは思っていなかったのか、 悔しそうに唇を噛んでいる。 「こ、これから、知っていけばいいじゃないですかっ!?」 「…あんた、日本語分かってる?」 なおも食い下がる女の子に、男は幾分、先程よりも低い声で言った。 「俺は、あんたなんかに興味ないよ。 今も、これからも俺が興味あるのは一人だけだ。」 男はそう言うと、女の子に背を向けて歩き出した、 その瞬間… 「……っ!?」 僕のほうを向いたのはきっと気の所為だ。 「……び、びびった。」 「おい。」 「ヒッ!?」 十年は寿命縮んだぞ、今の。 僕は口から心臓が出るかと思うほど驚いた。 そしてその勢いのまま振り向いて、今度こそ心臓が止まるかと思った。 いや、実際一秒くらい止まっていたかもしてない。 だってそうだろう? その、僕に声をかけてきた人物が、さっきまで告白をされていた男なんだから。 「覗き見とは随分な趣味だな、おい。」 「あっ…ち、違くて…その、僕ただ通りがかっただけでっ」 「で?」 「そ、そしたら外から声が聞こえてきて、それで…」 「覗いてたのか。」 「す、すみませんでしたぁ!!」 僕は勢い良く頭を下げると、脱兎の如くその場から逃げ出した。 …はずだった。 「まぁ、待て。」 「ピィっ!?」 僕は男が咄嗟に伸ばした腕によって、 襟首を掴まれまるで罠に掛かった小動物のように足を空中でバタつかせる羽目になった。 おまけに変な声まで……は、恥ずかしい。 「ぷっ……」 「ふぇ?」 「ははっ、お前、なんだよ”ピィっ”って…小動物みてぇ。」 「だっ、それはあなたが…」 「だからって…くくく…あはははは…」 「〜〜〜〜〜〜っっっっっ!!!!????」 僕はただ顔を赤くして、金魚のように口をぱくつかせ、 笑い続ける彼を見ているしかなかった。