誘う月

初めは屈辱以外の何者でもなかったこの行為。 それなのに今自分は喘ぎ、 求めるように腰を振る。 青年の思い通りになりたくないと思えば思うほど、 壱紫は青年に溺れて行った。 「そろそろ、俺も、限界…入れるよ?」 「……ぁ、まっ…」 やめて欲しくて腕を伸ばせば、 逃がさないとばかりに掌を絡められる。 そしてもう片方の手で壱紫の足を左右に大きく広げ、 閉じる事が出来ないように青年の体が割り込んでくる。 「指じゃ…足りないっしょ?壱紫。」 心地良いテノールで囁かれ、 舌先で耳を愛撫される。 快楽に慣らされた体は思いとは裏腹に まるで動こうとはせず、 秘部は待ちきれないとばかりに収縮を繰り返す。 「体は正直。」 ぴったり過ぎるその言葉に、 壱紫はきつく目を閉じた。 そして、それを合図と言わんばかりに青年が壱紫を貫いた。 「っあぁ…くっ…」 その衝撃で弓のように体が撓る。 何度入れられてても慣れる事はない圧迫感に襲われ、 その熱さに入れられている事実を思い知らされて頬が赤く染まる。 少しして、律動が開始され、 頭が正常に働かないまま壱紫は声を上げた。 「もっと啼いて、声を聞かせて?」 「んぁっ、あっぁあ…ゃっだ」 「もっと実感させて、壱紫。」 生理的に流れる涙に煽られ、 嫌だと言い続けながらも反応し続ける体に溺れる。 「…溺れてるのは俺も同じだ…」 「な、にっ…?」 「ん?…好きだよって」 愛しいと思う。 俺を綺麗だといった彼。 俺に戸惑う彼。 俺の前で乱れる彼。 その全てが愛しい。 「…お前、それ反則…」 ベッドに横たわり、 青年の腕に抱かれながら壱紫は言った。 「順番が違うだろ!?なぁ、普通告ってからこういうことすんじゃねぇの??」 噛み付きそうな勢いでまくし立てる壱紫に青年は苦笑し、一言。 「だって、怖かったんだもん。」 「”だもん”じゃねーよ!気色悪ィな、オイ!」 「酷いなぁ。」 「煩い!俺のが怖かったわ!考えてみろ!会って二日目の人間に尻に突っ込まれるんだぞ!? しかも俺、男!痛いわお前何考えてるか分かんないわ痛いわっ!三ヶ月だぞ!!さ・ん・か・げ・つ!!」 頬を膨らましながら声を荒げる少年に、 先程の色香とはまた違った色気が出ている。 ”……月みたいだ” 自分をそう言った壱紫。 それならば壱紫は太陽だ、と青年は瞬時に思った。 誰にでも屈託のない笑顔を向け、天真爛漫に子供たちと戯れる壱紫。 その姿は眩しくて、思わず目を逸らしてしまいたいほどだった。 そして、その彼は今自分の腕の中。 青年は何処か心が満たされていた。 「聞いてンのかっ、藍斗(アイト)!!」 「!?」 「ん?どうした?」 「今、名前…」 「あぁ?間違ってねぇだろ?何度も呼べって煩かったからな、耳にタコだ。」 それでも、今まで一度も呼ばれることはなかった。 藍斗は思う…今なら言えるだろうか、と。 「…壱紫…。」 「ぁん?」 「俺の…太陽になって。」 ずっと俺の存在を照らしてくれる太陽に。 「…………っっから!順番が違ぇ!!」 「そんなに元気があるならもう一発イっとく??」 「Σ…※Δ∇щ×●/////!!!!!?????」 そして月は今宵も誘う



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