誘う月

初めて会った時、 既に俺は囚われてしまっていたに違いない。 そうでなければ…… 【誘う月】 そこは何処にでもあるとあるマンションのとある部屋。 そこには独り暮らしの少年がいた。 大人から見ればただの不良。 けれど彼は子供好きで公園なんかでよく遊んでいたため、 子供たちにとっては良きお兄ちゃん。 そして、 「…ん…ゃあ……っは…」 夜の静かな室内に響く卑猥なそれ。 少年は快楽に眉を顰め、 それでも必死に逃れようと強くシーツを握り締めていた。 そう、少年は犯されていた。 銀糸の髪をした青年に。 「…手、そんなに握っていたら血が出るぞ?壱紫(カズシ)」 そう言って少年…壱紫の手を取り自分の口元へと導く。 吸い付くように触れられ、 壱紫はピクリと肩を震わせた。 青年の唇は弧を描き、壱紫をあやす様に額にキスをした。 「…触…る、な…」 「ん、無理。」 壱紫は青年から顔を背けるが、 青年はそれを気にする風もなく、 壱紫は顔を背けた事によって現れた項に花弁を散らされる事となった。 「痛っ…テメェ、な、のつもり…」 「別に、したかったから。」 青年は相変わらず楽しそうで、 壱紫はその笑顔に思わず引っ張られそうになったが、 唇を噛み締める事によってそれを拒んだ。 「だから、血…でちゃうよ?」 「そう思うならやめっ…ん、ふぅ…」 青年は壱紫が自分の体を痛めつけるような行動をとると、 それを止めるかのようにキスをする。 壱紫はその度に思う。 …どうしてこんな事になってしまったのか と。 出会ったのは三ヶ月前。 学校からの帰り道に偶然肩がぶつかってしまった。 ただそれだけ。 青年の持っていた缶コーヒーが壱紫に掛からなければ。 「ぅわ……」 「ゴメン、大丈夫か?」 「はぁ、怪我は無いです。」 「あぁ、コーヒーがかかってしまったか。」 本来なら文句の一つも言いたいところだったが、 本当に申し訳なさそうに誤ってくるもんだから気が削がれてしまった。 それでも、顔は見てやろうと顔を上げたのだ。 そして、壱紫は青年を見た瞬間言葉を失った。 正確には青年の髪に。 綺麗な銀色のその髪に壱紫は見惚れていた。 「…月みたいだ」 そう思ったときには呟いていた。 青年の目が大きく見開かれる。 思えばこの発言からだった。 青年とのこの異常な付き合いは。 初めて犯されたのは二度目に会った時。 クリーニングに出させて欲しいとその場で学ランの上を持っていかれ、 住所まで書かされて…、 次の週に壱紫の家まで届けに来てまんまと上がり込み、 そして酒に酔わされていただかれてしまったのだ。 それからは今のように来ては壱紫を犯していく。 まるで娼婦のような自分に壱紫は嫌気がさしてくる。 「何を…考えてる?今はこっち。」 「ぅあぁぁっ…」 心ここにあらずだった壱紫が気に入らなかったらしく、 青年は突然壱紫の秘部に指を差し込んだ。 中で広げるように動かされれば、 その快楽に流され壱紫は大きく仰け反り酔いしれる。



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